オンライン会議やリモートワークが普及した今、「営業力」の重要性はこれまで以上に高まっています。しかし、どれだけ営業力があったとしても、それが個々のスキルに依存したものであれば、チームとして一貫した成果を出し続けることは難しいでしょう。
営業チームが安定した成果を出すためには、チーム内で共通した営業手法を共有し、全員が一定の基準で活動できるようにすることが重要です。特に、新人や若手ができるだけ早く戦力となるためには、指導の指針となる営業マニュアルが大きな役割を果たします。
しかし、単に業務手順をまとめるだけでは、現場で使える実践的なマニュアルにはなりません。そこで今回は、成果につながる営業マニュアルの作り方とそのコツをステップに沿ってご紹介していきます。
目次
なぜ営業マニュアルが必要なのか?
営業マニュアルの作成方法についてご紹介する前に、まずはその重要性について改めて整理しておきましょう。
営業マニュアルでは、顧客へのアプローチ方法やヒアリングのコツ、クロージングのタイミングなど、営業活動に必要なさまざまなノウハウが明文化されます。そのため、マニュアルを活用することで、新人や経験が浅いメンバーでも成果を出しやすくなり、さらなる工夫を取り入れる姿勢が育まれます。また、チームのリーダーにとっても、指導や評価がスムーズになり、メンバーの育成にかける時間を効率化できます。
営業マニュアルのメリットは、以下のようにまとめることができます。
- 業務の一貫性が確保され、営業スキルや成果のばらつきを防止できる
- 新人や若手が即戦力化しやすくなり、育成コストの削減につながる
- リーダーの負担を軽減し、メンバーの自律的な成長を促す
このように、わかりやすく実践的な営業マニュアルを作成することによって、チーム全体の成果の向上につながるのです。
営業マニュアル作成の7つのステップ
営業マニュアルは、おおまかに以下7つのステップで作成します。
Step.1 作成項目の洗い出しと整理
営業マニュアルを作成するには、まず以下の4つの項目を決定していきます。
◆営業マニュアル作成の目的
何のためにマニュアルを作成し、どの業務を習得させたいのかを明確にしましょう。
◆マニュアルの対象者
営業マニュアルの対象読者を設定しましょう。マニュアルの対象が新人なのかベテランなのかによって、内容や記載方法も変わってきます。
◆最重要項目などの優先順位
マニュアル作成にかけられる予算や期間との兼ね合いで、記載できるボリュームも異なります。記載すべき内容の優先順位を決め、最低限必要な項目を明確にしておきましょう。
◆作成担当者
マニュアル作成の責任者や担当者を決定します。
Step.2 関係部門の協力を得る
マニュアル作成には、経理や総務など、営業以外の部門の協力が必要な場合もあります。関係部門には事前に概要を共有し、すり合わせをしておくとスムーズでしょう。
Step.3 予算と作成期間の策定
営業マニュアルを作成する予算と作成期間を策定しましょう。
①Step.1で決めた優先順位に基づいた最小限の内容で作成する場合
②ある程度詳細なものを作成する場合
③全項目を網羅する場合
の3パターンの予算と作成期間を見積もることで、稟議にもかけやすくなります。
Step.4 フォーマットの作成
紙やデータ、動画など、マニュアルの形式を決め、それぞれの形式に合わせたフォーマットを作成します。
▼マニュアルの作成形式の選び方については、以下の記事で詳しく説明しています。
Step.5 マニュアルの執筆
マニュアルの形式と大枠が決まったら、実際にマニュアルの原稿を執筆していきます。まずは、Step.1で整理した項目に基づいた目次の作成から始めましょう。過不足のない目次がマニュアル全体の骨組みとなります。目次ができ次第、各項目を執筆していきます。
全体の原稿作成が終わったら、目的に沿った内容になっているか、情報に過不足がないかを上長やメンバーに確認してもらいましょう。
Step.6 メンテナンスルールの設定
マニュアルに記載されている内容は、時間とともに古くなっていきます。正しく管理・更新しないと、古い情報がそのまま残ってしまい、実際の業務と乖離が生まれミスの原因になったり、マニュアル自体が使われなくなることもあります。
マニュアルは一度作成して終わりではなく、定期的な見直しが不可欠です。あらかじめ更新頻度などのルールを定め、改訂の履歴をつけながら、必要に応じたメンテナンスができる体制を作りましょう。
Step.7 フィードバックと改善
Step.6で設定したメンテナンスルールに加えて、新しいシステムの導入や業務内容の変更があった際には、都度マニュアルの更新が必要です。また、実際に運用するなかで、情報の不足や改善点が見つかることも少なくありません。定期的に現場からのフィードバックを収集し、内容が実務と乖離がないかを確認しながらアップデートを重ねていきましょう。
営業マニュアルの3つのポイント
ここまで、営業マニュアルの必要性と基本的な作成フローをご紹介しました。ここからは、実際に営業マニュアルを作成する際の具体的なポイントについてご紹介します。
具体的なゴールを設定する
作成フローのStep.1でマニュアル作成の目的を決める際は、「マニュアルを活用することで何を達成したいのか」という具体的なゴールを設定することが重要です。このゴールが曖昧だと、マニュアルの方向性がブレてしまい、具体的な成果につながらない恐れがあります。
たとえば、「新人が3か月以内に一人で顧客対応できるスキルを身につける」「チーム全体のクロージング率を10%向上させる」といった明確な数値目標を設定するとよいでしょう。
目標を具体化することで、マニュアルに必要な情報も自然と整理されていきます。
書き方や表現方法を工夫する
マニュアルはシンプルで読みやすく、かつ理解しやすい内容であることが重要です。たとえば、以下のポイントを意識するとよいでしょう。
◆シンプルな表現で要点を伝える
複雑な言い回しは避け、簡潔で明確な表現を心がけましょう。また、新人向けマニュアルの場合は、専門用語に注釈をつけたり、巻末に用語集を設けるのも効果的です。
◆図解やフローチャートを活用する
文字だけでは伝わりにくい部分は、図や写真、イラストなどを活用し、視覚的な情報を補足するようにしましょう。また、営業プロセスや業務手順は、フローチャートで示すことで、全体像を俯瞰的に捉えやすくなります。
▼フローチャートの書き方については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
◆ケーススタディや実例を取り入れる
過去の実例を紹介することで、マニュアルがより実践的なものになります。たとえば、成功した営業トークと失敗したトークの比較を載せることで、具体的な改善点や実際の営業現場でのイメージがつかみやすくなるでしょう。
マニュアルを定着させる工夫をする
マニュアルが完成しても、単に配布しただけではチームに定着しません。活用を促すための工夫を取り入れましょう。
◆定期的な読み合わせを実施する
定期的にチーム全員でマニュアルの読み合わせを実施し、内容の理解度を確認しましょう。マニュアルに書かれていることが正しく理解できているか、実践できているか、をメンバー間で確認します。
◆ロールプレイングを取り入れる
営業プロセスの各段階を想定したロールプレイングを行うことで、メンバーが実践的なスキルを身につけやすくなります。新人研修などにも取り入れやすいでしょう。
◆フィードバックの場を設ける
メンバーから意見を集め、マニュアルの内容や運用方法を見直します。収集したフィードバックは随時マニュアルに反映し、常に最新の情報が反映されているようにしましょう。
まとめ
営業マニュアルを作成し、活用することで、営業チームの成果を安定させるだけでなく、リーダーの負担も軽減することができます。今回の記事を参考にしながら、ぜひ皆さんのチームにあったマニュアル作成に取り組んでみてください。