マニュアルは、業務の効率化や品質維持において非常に効果的なツールです。マニュアルを作成する際には、マニュアルをどのような形式で作るのかを決める必要があります。
この記事では、紙、データ、動画、HTMLといったマニュアル作成の代表的な形式について、それぞれメリットとデメリットを解説していきます。
紙媒体のマニュアルのメリット・デメリット
メリット① 閲覧環境を選ばない
紙媒体のマニュアルは、印刷されたマニュアルが手元にあれば、閲覧環境を選ばずいつでもどこでも参照することができます。
閲覧用のデジタルデバイスや電源、インターネット接続を必要とせず、持ち運びも簡単なため、緊急時や電源を確保できない環境であっても安心して利用することができます。
オフィスでの回覧や出先での確認・共有など、さまざまな環境での閲覧が見込まれる場合は紙媒体のマニュアルが適しているでしょう。
メリット②年齢を問わず、誰でも使いやすい
紙媒体のマニュアルは、「開いて読む」というシンプルな動作で使用できるため、デジタルデバイスやアプリケーションの操作知識が不要で、マニュアルを閲覧する心理的なハードルを下げることができます。
幅広い年齢層が利用する場合は、年齢を問わず誰にでも直感的に使える紙媒体のマニュアルが特に有効的と言えるでしょう。
メリット③自由に書き込め、記憶しやすい
重要な部分や気づいたことをメモやマーカーで直接マニュアルに書き込むことができ、個々のユーザーに合わせたカスタマイズが容易な点も、紙のマニュアルのメリットです。
人間が記憶をする際には、視覚や触覚を通じた体験が非常に重要と言われており、紙媒体のマニュアルの方が、内容を頭に入れやすいという人も多いでしょう。
デメリット①更新が難しい
紙媒体のマニュアルのデメリットとしては、まず更新が難しいことが挙げられます。情報の追加や修正が必要な場合、修正したうえで再度印刷し直さなければならないため、コストと時間がかかり、差し替えや再配布の手間も大きいです。
そのため、頻繁に更新されるマニュアルは、紙媒体での作成は不向きと言えます。
デメリット②保管スペースが必要
紙媒体のマニュアルは保管スペースが必要です。大量のマニュアルを保管する場合、かなりのスペースを占有することになります。
また、ページ数が増えるとマニュアルが分厚く重くなり、閲覧性が悪くなるだけでなく、持ち運びや管理にも影響が出てしまいます。
データマニュアルのメリット・デメリット
メリット①更新が容易
データ上で作成されるため、表現の修正や画像の追加などの更新が非常に簡単です。完成後に誤りが発覚した際も迅速に修正でき、再配布の手間もほとんどかかりません。
また、情報の追加や修正が即座に反映されるため、常に最新の情報を掲載することができます。頻繁な更新が予想されるマニュアルには、データ形式が適していると言えるでしょう。
メリット②検索がしやすい
必要な情報をキーワードで検索することができ、知りたい情報にすぐにたどり着くことができます。特にPDF形式の場合は、本文中の見出しを抽出して目次を作成することができ、目次から読みたいページに直接移動することも可能です。
ボリュームが多く、領域も幅広い業務の場合は、すぐに欲しい情報にアクセスできるデータマニュアルが効果的でしょう。
デメリット①ユーザーにデジタルリテラシーが求められる
データマニュアルを閲覧する際には、PCやスマートフォン、タブレットなどのデジタルデバイスや対応するソフトウェアが必要です。こういったデジタルデバイスの使用に慣れていない方にとっては、閲覧がストレスになってしまう可能性があります。
また、これらのデバイスやソフトウェアに故障・バグが発生した際は、閲覧自体ができなくなるリスクがあります。
デメリット②バージョンの混在・セキュリティリスクがある
更新が簡単というのはデータマニュアルのメリットですが、それゆえに改訂の際に複数のバージョンが混在してしまうおそれがあります。
また、データにアクセスできれば簡単にコピーや改ざんができてしまうため、パスワードで保護するなどのセキュリティ対策をしていないと、情報漏洩やデータの紛失・破損のリスクが高まります。
動画マニュアルのメリット・デメリット
メリット①複雑な業務でも理解しやすい
動画マニュアルは視覚や聴覚を活用するため、情報の伝達力が非常に高いです。文章や画像だけでは伝わりにくい業務でも、具体的な操作手順を視覚的に示すことができるため、理解を深めることができます。
また、動画は文字や写真よりも記憶に定着しやすいため、複雑な業務や工程が多い作業では動画マニュアルが効果的でしょう。
メリット②言語の壁を超えられる
動画は視覚的に動作を伝えられるため、日本語が母語でない方にとっても理解しやすいと言えます。また、字幕や音声を追加することで多言語対応が可能になり、オンライン上で地域や国を超えて世界中からアクセスできます。
構成や内容を工夫することで、日本語が得意でないユーザーでも活用できるマニュアルになるでしょう。
デメリット①作成・更新が難しい
動画マニュアルの作成には時間と専門的な技術が求められます。撮影するためには、台本を作成し、撮影場所や機材を準備しなければならず、撮影後も動画の編集が必要です。
さらに、内容を更新する際には再撮影や編集が必要となるため、維持管理にも技術力が求められます。
デメリット②検索がしにくく、非効率な場合もある
特定の情報を素早く検索するのが難しい点も、動画マニュアルのデメリットと言えるでしょう。どの情報がどこで説明されているのかを記載することはできますが、ピンポイントで必要な情報へアクセスするのは困難です。
また、動画マニュアルを見ながら作業する場合、再生・停止を繰り返さなければならず、効率が落ちてしまう可能性があります。
HTMLマニュアルのメリット・デメリット
メリット①更新・メンテナンスが容易
HTMLマニュアルはWebサーバー上で管理されるため、更新・メンテナンスが容易です。支部や支店など、マニュアルの配布先が多い場合であっても、インターネット環境があれば一度にマニュアルの更新・再配布が行えます。
常にタイムリーな情報を反映する必要があるマニュアルは、HTML形式が向いていると言えるでしょう。
メリット②バージョンの混在がない
マニュアルのデータが一か所に保存されるため、紙媒体やデータと違って複数のバージョンが混在することがなく、最新のマニュアルを閲覧することができます。
頻繁に更新されるマニュアルの場合でも、常に最新情報のみを掲載でき、ユーザーが古いマニュアルかどうかを確認する必要がありません。
デメリット①デジタルリテラシーが求められる
HTMLマニュアルの閲覧にはデジタルデバイスとインターネット接続が必要です。そのため、デジタルデバイスの操作に不慣れなユーザーにとっては使いにくい可能性があります。
また、オフライン環境では利用することができないため、閲覧環境を事前に整えておく必要があります。
デメリット②知識やスキルが必要
HTMLマニュアルの作成と維持には、Webデザインやプログラミングの知識が必要です。複雑なレイアウトを表現する場合には、さらに専門的なスキルが求められます。
また、製品マニュアルなど、Web上でHTMLマニュアルを公開し続ける場合は、継続的なメンテナンスが不可欠であり、HTMLを更新できる知識・スキルのある人材が必要となるでしょう。
まとめ
マニュアル作成方法には、紙、データ、動画、HTMLなどの各形式があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。どの形式にも一長一短があるため、特定の形式が絶対的に優れているとは言い切れません。
どうすればユーザーが理解しやすくなるかを意識し、マニュアル作成の目的に応じた適切な形式を検討することが重要です。