業務の効率化や属人化防止に欠かせないマニュアル。しかし、いざ作ってみると「分かりにくい」「結局使われていない」という壁にぶつかり、挫折してしまう担当者は少なくありません。
実は、読まれない・使われないマニュアルには共通の「やってはいけないNGパターン」が存在します。このパターンを知らないまま進めてしまうと、どれだけ丁寧に作成しても、現場に定着させることは難しくなります。
そこで本記事では、マニュアル作成で陥りがちな9つのNG例を「作成プロセス」「内容・表現」「デザイン」の3つの切り口からご紹介します。
使われないマニュアルが引き起こすリスク
マニュアル作成の目的は、業務を標準化し、誰が担当しても一定のクオリティで作業できる状態を作ることです。しかし、多くの現場では「マニュアルはあるけれど機能していない」という問題が起きています。
こうしたマニュアル作成における失敗の多くは、担当者の「良かれと思ってやった判断」から生まれています。その結果として生じる「使われないマニュアル」は、業務にさまざまな悪影響を及ぼす原因となってしまいます。
ここでは、使われないマニュアルによって起こり得るリスクについて整理します。
リソースの無駄につながる
マニュアル作成には、担当者の時間や労力だけでなく、関係者へのヒアリングや確認など、多くのリソースが必要です。しかし、完成後に現場で使われなければ、それらの時間と労力は業務改善につながらないまま無駄になってしまいます。一度作ったマニュアルが活用されていない状態は、「作らなかった」のではなく、「作ったうえで成果が出なかった」という点で、より大きな損失と言えるでしょう。
さらに、使われないマニュアルは「どうせ読まれない」「作っても意味がない」という認識を現場に残し、改善や更新へのモチベーション低下を招くリスクもあります。その結果、再作成や作り直しが発生し、同じ業務に何度もリソースを割くことになってしまいます。
現場の混乱やミスを招く
使われないまま放置されたマニュアルは、時間の経過とともにどんどん情報が古くなっていきます。その結果、マニュアルが参照された際に、実際の手順と異なる内容や現場との乖離が生じ、混乱やミスを招く原因になります。
使われていない古いマニュアルが存在し続けることは、「存在しない」よりも大きな実害を生む可能性があるのです。
属人化の解消が進まない
マニュアルの使い勝手が悪いと、現場では「マニュアルを読むより、詳しい人に聞いたほうが早い」と判断されがちです。その結果、いつまでも特定の人に業務や質問が集中し、属人化した状態が解消されないままになってしまいます。
この状態が続くと、教育にかかる時間やコストは削減されず、現場の負担が増え続けるという悪循環に陥ってしまいます。
マニュアル作成プロセスのNG例
マニュアル作成では、書き始める前にプロジェクトの進め方を設計することが重要です。プロジェクトの組み立て方次第で、成果の8割が決まるといっても過言ではありません。内容の質以前に、進行方法を誤ると、途中で頓挫してしまったり、完成しても活用されないマニュアルになってしまう可能性があります。
ここでは、作成担当者がつい陥りがちなプロセス面でのNG例を見ていきましょう。
NG 1:通常業務の合間に片手間で進める
多くの現場でありがちなのが、マニュアル作成を通常業務の隙間時間で行おうとすることです。マニュアル作成は思考力と集中力を必要とする業務であるため、細切れの時間で進めようとすると、全体像が見えにくくなり、内容の質も低下してしまいます。
また、優先順位が低くなるため、いつまでも完成せず、作成者自身のモチベーションも低下してしまいます。プロジェクトとして進める以上、業務の一部としてしっかりと時間を確保し、計画的に進めることが必要です。
NG 2:最初から「完璧」を目指す
構成・文章・図解のすべてを最初から完璧にしようとすると、作業はなかなか進みません。すべての例外パターンを網羅しようとしたり、一字一句を精査しすぎたりすると、いつまで経っても完成しないまま、頓挫するケースも多く見られます。
マニュアルは運用しながら育てていくものです。まずは主要業務の6~7割程度をカバーする内容で形にし、現場で使いながら改善していく方が、結果的に質の高いマニュアルになります。
▼マニュアルの改訂については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
NG 3:現場の声を反映せず、作成者一人で完結させる
作成者がデスクに向かって一人で書き上げたマニュアルは、現場とのズレが生じやすくなります。どれだけ業務に精通している人であっても、現場での細かな工夫や、新人がつまづきやすいポイントまでは拾いきれないことがあるからです。
下書きの段階で現場にチェックを依頼し、フィードバックを反映する工程を省かないことが重要です。
内容・表現のNG例
良いマニュアルは、読み手が迷うことなく行動に移せるものです。しかし、作成者が内容を理解しすぎているがゆえに、初心者にとって不親切な表現になってしまうことも少なくありません。
ここでは、現場で敬遠されるマニュアルに共通する4つの書き方NG例と、それぞれの具体的な改善例を紹介します。
NG 4:文字ばかりのレイアウト
詳しく書こうとするあまり、段落や一文が長く、文字がページを埋め尽くしているケースです。読み手は必要な情報を探すのに時間がかかり、読む意欲を失ってしまいます。
箇条書きやフローチャートなどの図を活用し、視認性を高めた読みやすいレイアウトで作成しましょう。
<Before>
「まずパソコンを起動し、ログイン画面が表示されたらパスワードを入力してデスクトップ画面が出たらブラウザを開き、社内システムのURLを叩いてログインしてください。」
<After>
1. パソコンを起動する
2. ログインパスワードを入力する
3. ブラウザで社内システムにアクセスする
▼フローチャートの作り方については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
NG 5:「適宜」「しっかり」など、人によって解釈が分かれる曖昧表現
「状況に応じて適宜判断してください」「資料をしっかり確認すること」といった表現は、指示者や作成者にとっては楽ですが、読み手にとっては具体的な行動基準が分かりません。
判断基準は、数値や条件で明確にするよう意識しましょう。
<Before>
「エラーが出た場合は適宜対応してください。」
<After>
「エラーコードがA-01の場合は再起動、B-02の場合はシステム管理者に連絡してください。」
NG 6:1つのステップに複数の動作を詰め込みすぎる
1つの項目に「Aをして、Bをして、ついでにCも確認する」と複数の動作が含まれていると、手順の抜け漏れが起こりやすくなります。「1ステップ=1アクション」になるよう、できるだけ動作を分解しましょう。
<Before>
「申請書を作成して、上長の承認をもらい、総務に提出してから控えをファイルしてください。」
<After>
1. 申請書を作成する
2. 上長の承認をもらう
3. 総務に提出する
4. 控えをファイルする
デザイン・構成のNG例
マニュアルは、ただの読み物ではなく、目的を達成するためのツールです。そのため、使い勝手の良さが重要になります。ここからは、情報の配置や見た目のデザインにおいて、初心者が陥りがちなポイントを確認していきましょう。
NG 7:情報を詰め込みすぎる
1ページにできるだけ多くの情報を詰め込もうとして、余白をギリギリまで削ってしまうケースです。余白がないと、どこから読み始めればいいのかを瞬時に判断できず、読み手の負担になってしまいます。
重要なのは、あえて「何も書かないスペース」を作ることです。情報のまとまりごとに十分な余白を設けることで、読み手の視線がスムーズに誘導され、理解度が上がります。
NG 8:強調箇所が多すぎる
「ここも大事、あそこも大事」と、赤字や太字、マーカーを多用してしまうのも逆効果です。強調箇所が多すぎると、視覚的なノイズとなり、本当に注意すべきポイントが埋もれてしまいます。
そのため、あらかじめルールを決めておくことが重要です。例えば「強調に使う色は1~2色まで」「1画面(または1ページ)につき最も重要な1点だけを目立たせる」といった基準を設けることで、情報の優先順位が明確になります。
NG 9:視線の導線が意識されていない
人間の視線は、一般的にアルファベットの「Z」や「F」の形に動くと言われています。この視線の動きを無視して、画像と説明文がバラバラに配置されていると、読み手は内容を追いづらくなり、混乱を招いてしまいます。
例えば「左に説明文、右に画像」「上から下へと時系列に並べる」といったように、あらかじめレイアウトのルールを決めておくことが重要です。一貫性のないレイアウトは、無意識のうちに読み手のストレスを蓄積させ、結果として「使いにくい」という評価につながります。
▼以下の記事では、使いやすいマニュアルを作成するためのポイントをご紹介しています。
まとめ
今回は9つのNG例をご紹介しましたが、9つすべてを一度に改善しようとすると、作成のハードルが高く感じてしまいます。まずは、今のマニュアルが「文字だらけになっていないか」「曖昧な表現を使っていないか」といった、取り組みやすいポイントから見直してみてください。
大切なのは、最初から完璧なものを目指すことではなく、現場の声を聞きながら、使いやすい形へとアップデートし続けることです。この記事で紹介した内容を参考に、「形だけで終わらない、使われ続けるマニュアル」づくりに取り組んでみてください。



