マニュアル制作でやってはいけない3つのこと

マニュアルは、初めてつくるときが一番大変です。過去に制作したマニュアルがあれば、それを元に改訂していけばいいのですが、初めて作るときはゼロからのスタートになります。どのように始めればいいのか、どこから手をつければいいのか分からずに、いろいろな考えがまとまらないうちにいつの間にか頓挫していた…という経験をお持ちの方もいるかもしれません。

今回は、実際にマニュアル制作に着手する前の心がまえとして、マニュアル制作でやってはいけないことを3つお伝えいたします。

マニュアル制作でやってはいけないこと1.いきなり完璧なものを仕上げようとする

初めてマニュアル制作に臨む企業様で最もよくあるパターンは、これです。

マニュアルを「従業員の作業を完璧に規定するためのもの」と考えてしまうと、落ち度のないかんぜんなマニュアルにしなければならないという考え方に陥り、結果的に、関係者間での確認や現場での調査、文章づくりに時間を取られ過ぎてしまい、そうこうしているうちにマニュアル制作の取り組みそのものが風化してしまう…ということになってしまいます。

マニュアル制作に初めて取り掛かるときは、あくまで「暫定版」で作ることを目標に置きましょう。

実態的な現場の動きに沿って改訂を繰り返し、常に「その時点では最も良い」という状態が維持できるのを目指して運用します。

マニュアル制作でやってはいけないこと2.徹底的に厳守させる

マニュアルは、その内容に従って業務を遂行するためのものです。

なのに厳守させないとはどういうことでしょうか。それは前述の「暫定版」であることに関係しています。

マニュアルの制作者がマニュアルを完璧なものとして仕上げないようにするのと同じように、それを使用する従業員もマニュアルを完璧なものとして妄信しないようにする必要があります。言い方を変えれば、トップダウンで従業員たちの思考をマニュアルで縛ってしまうのはNGだということでもあります。

マニュアルには常に、改良の余地があるのです。

うがった見方ですが、どんなに非効率な手順になっていたとしても『マニュアルにそう書いてあるからその通りに作業をしているだけ』という意見が通ってしまうなら、残念ながらそのマニュアルは適切に運用されていないということになってしまいます。

使っている従業員一人ひとりが、今のマニュアルに記載されている内容からどれだけ改善できるだろうか、と日々考えながら仕事に従事してもらうことが大切なので、マニュアルの配布時にはくれぐれも厳守を命じるのではなく『このマニュアルは暫定版なので、基本的にはこの内容に従って作業を進めてほしいが、現場の実態に合わない点や非効率な点は改善する』というスタンスを明確にしてください。

ただ伝えるだけでは改善への意見は出てきづらいので、意見を受け付ける投書箱やメールフォームを設置する、定期的に意見交換会を開催する、定期的に改善案を提出する制度をつくる、などの工夫があるとよいでしょう。丁寧な説明とともに、みんなで良いマニュアルをつくっていく、というメッセージを伝えることが重要です。

マニュアル制作でやってはいけないこと3.担当者に丸投げする

マニュアルを制作するとなると、まずは担当者を割り当てることになるかと思います。

その担当者が1人であっても2人であっても、丸投げはNGです。

マニュアル制作は、多くの企業の場合、専任の担当ではなく兼務で担当することが多い業務です。また、『いつかはやらなきゃいけないことだと分かっているけど、緊急性がないので後回しにしがち』という代表的なものでもあります。そのため丸投げにしてしまうと、いつまで経っても完成しないということになってしまいます。

あるいは、形は完成したとしても、現場で使えないマニュアルになってしまうことが多々あります。

ここでいう『現場で使えない』とは、実際に作業している人の視点が欠けており実務で使えないというケースのほか、内容は正しいが文章がギッシリで読みづらく実用的ではないというケース、例えば水を使う現場では濡れてしまうので使いづらいなどの環境によるケースなど、さまざまあります。

制作の進行管理だけではなく、現場で働く人たちの視点をしっかりと取り入れ、丁寧に取材をし、作業をしながらも使いやすいように文字だけでなく図や写真を使うなど、その制作過程にはしっかりとしたマネジメントが必要です。もちろん、最初に述べた『完璧を目指し過ぎない』さじ加減も、担当者だけでなくマネージャーがちゃんと見極めていく必要があるでしょう。

また、マニュアル制作を兼務で行なう担当者の心境としても、丸投げされたのでは押し付けられたような気分になり、前向きに取り組むことができません。たとえその担当者が自らマニュアル制作を買って出たのだとしても、その進捗に一切の関心が払われなければ次第にモチベーションは下がり、いつの間にか立ち消えてしまうということになりかねません(当然、それまでに費やされた時間や工数は無駄なコストになってしまいます)。

マニュアルは制作や運用そのものが目的ではありません。マニュアルによって、業務の何かしらを改善していくことが目的です。そのため、改善の主役となる従業員たちが低いモチベーションで取り組むような状態になるのは、本末転倒です。

みんなが同じ方向を向いて、積極的にマニュアルを活用していくには、今回紹介したような心がまえを共有し、協力し合って取り組んでいく必要があります。